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イムデトラについて

開発経緯

イムデトラについて

開発経緯

イムデトラ®点滴静注用(一般名:タルラタマブ)は、腫瘍抗原のデルタ様リガンド3(DLL3)及びT細胞受容体複合体の分化抗原群3(CD3)に特異的に結合する、新規の半減期延長型BiTE®(二重特異性T細胞誘導)分子であり、小細胞肺癌(SCLC)治療薬として、米国Amgen社により開発されました。
SCLCは悪性度の高い神経内分泌腫瘍であり、増殖速度が早いため早期に転移・増悪しやすく、予後不良な疾患です1)。SCLCの約70%は治癒困難な進展型SCLCであり、多くが治療から1年以内に再発し1)、 5年生存率はⅣ期で1.7%と報告されています2)。再発SCLCについては、過去20年間、新たな治療薬は開発されておらず、3次治療として確立された標準治療もありませんでした。
また、SCLCは、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現抑制や、主要組織適合性複合体(MHC)クラスⅠの低発現による抗原提示の低下などから免疫細胞の浸潤が制限され、非炎症性腫瘍のサブタイプ(cold tumor)と考えられています3,4)。そのため、PD-L1及びプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)以外をターゲットとする新たな免疫学的治療アプローチが求められていました。
DLL3は、肺神経内分泌細胞の発生に関与するNotchシグナル伝達受容体に対するリガンドであり、SCLC細胞表面に発現しています。DLL3の発現は腫瘍の増殖及び転移を引き起こします5,6)。イムデトラは、DLL3及びCD3に特異的に結合することで、MHCクラスⅠ及びⅡ発現に依存せず、細胞傷害性CD8+又はCD4+T細胞を特異的に活性化することにより、抗腫瘍効果を示します5)
米国では2023年10月に画期的治療薬に指定され、国際共同第Ⅱ相非盲検試験(DeLLphi-301試験)7)の結果に基づき、2024年5月に「プラチナ製剤ベースの化学療法による治療中又は治療後に病勢進行が認められた進展型SCLCの成人患者」を適応とする迅速承認を取得しました。米国に続いてカナダで承認されています(2024年9月時点)。
本邦では、2024年2月に希少疾病用医薬品の指定を受け、2024年12月に「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」に対する治療薬として承認を取得しました。
References

1)Rudin CM et al. Nat Rev Dis Primers. 2021; 7: 3.

2)公益財団法人 がん研究振興財団, がんの統計2024. p95

3)Caliman E et al. Lung Cancer. 2023; 175: 88-100.

4)Sutherland KD et al. Genes Dev. 2022; 36: 241-258.

5)Giffin MJ et al. Clin Cancer Res. 2021; 27: 1526-1537.
[利益相反:本試験はAmgen社の支援により行われた。]

6)Owen DH et al. J Hematol Oncol. 2019; 12: 61.
[利益相反:著者にAmgen社の社員が含まれる。]

7)社内資料:国際共同第Ⅱ相試験(DeLLphi-301試験/20200491試験)(承認時評価資料: CTD2.7.6.2)